大規模修繕の施工会社はどう選ぶ?発注方式の違いと選定プロセスのポイント
大規模修繕工事を成功させるためには、どの施工会社に工事を依頼するかという選定そのものが、非常に重要な意思決定になります。工事の金額が大きく、専門的な判断が必要になる場面が多いだけに、どのような方式で発注先を決めるのか、そのプロセスが公正に進められているかどうかは、工事の結果そのものに大きく影響します。この記事では、大規模修繕における発注方式の違いと、施工会社の選定を公正に進めるためのポイントについてご紹介します。
発注方式にはどんな種類があるか
大規模修繕の発注方式には、大きく分けて「設計監理方式」と「責任施工方式」という考え方があります。設計監理方式は、建築士事務所や設計コンサルタントなどの専門家に、工事の仕様づくりや設計図の作成、施工会社の選定支援、工事中の監理(施工会社が設計通りに工事を行っているかを確認する業務)を依頼する方式です。設計と施工を担う会社を分けることで、互いにチェックし合う関係をつくりやすいという特徴があります。
一方、責任施工方式は、一つの施工会社に調査・診断から工事の設計、実際の施工までを一括して依頼する方式です。やり取りする相手が一つの会社に集約されるため、スケジュールの調整がしやすく、工事全体のスピード感が出やすいという特徴があります。
どちらの方式にも長所があり、どちらが優れているかは一概には言えません。設計監理方式は、設計と施工のチェック機能が働きやすい一方で、設計コンサルタントへの委託費用が別途発生することや、関係者が増えることで調整に時間がかかる場合があります。責任施工方式は、やり取りがシンプルで話が早く進みやすい一方で、工事内容や金額の妥当性を外部の目で確認する機会が少なくなりやすいという面もあります。管理組合の規模や、理事会として工事にどの程度の時間をかけられるかといった事情も踏まえて、どちらの方式が自分たちのマンションに合っているかを検討することが大切です。なお、どちらの方式を選んだ場合でも、提案された工事内容や見積金額を鵜呑みにせず、理事会として内容を確認する姿勢そのものは変わらず重要になります。
選定の際に注意したい「利益相反」の問題
発注方式を検討する際、特に意識しておきたいのが、設計監理方式において専門家に支援を依頼する場合の「利益相反」の問題です。国土交通省は平成29年1月、一部の大規模修繕工事において、施工会社の選定に際し、発注者である管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されているとして、管理組合等への注意喚起と相談窓口の案内を行いました。具体的には、設計コンサルタントが特定の施工会社から紹介料などを受け取る関係にありながら、その施工会社を有利に扱うような提案を管理組合に対して行っていたケースなどが問題視されたとされています。
この注意喚起のなかでは、参考になる取り組みの例として、利益相反的な提案をしてきた設計会社をその時点で選定の対象から除外した事例や、施工会社を公募など透明な形で募集し、理事会での投票や審議といった公正な手続きを踏んで決定した事例が紹介されています。これらの例からも分かるように、設計コンサルタントや施工会社との関係性が適切かどうかを、発注者側が意識的に確認していく姿勢が重要だといえます。
公正な選定プロセスを作るための工夫
利益相反の問題を避けるためには、まず複数の設計コンサルタントや施工会社から話を聞き、一つの会社の意見だけに依存しない体制をつくることが基本になります。施工会社の募集についても、特定の会社に声をかけるだけでなく、一定の条件を満たす会社を公募するなど、透明性の高い方法を取り入れている管理組合も見られます。
また、選定の過程を理事会の議事録としてしっかり残しておくことも重要です。どのような基準で複数の会社を比較したのか、最終的にどのような議論を経て決定したのかを記録しておけば、後から住民への説明を求められた際にも、経緯を具体的に示すことができます。理事会の役員は数年で交代することが多いため、選定プロセスの記録を残しておくことは、次の役員が同様の判断を迫られた際の参考資料としても役立ちます。
複数の提案を比較する際には、金額だけでなく、工事の仕様や使用する材料の説明がどれだけ具体的に示されているか、質問への回答が分かりやすいかといった点も、あわせて確認しておきたい観点です。説明が丁寧で、質問に対して資料を示しながら答えてくれる会社かどうかは、実際に工事が始まった後のコミュニケーションの取りやすさを想像するうえでも参考になります。
困ったときの相談窓口
設計コンサルタントや施工会社との関係性について疑問や不安を感じた場合、管理組合だけで判断を抱え込む必要はありません。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)や、公益財団法人マンション管理センターでは、大規模修繕に関する相談を受け付けています。これらの相談窓口は、国土交通省が注意喚起を行った際にも案内されているもので、専門家の意見を交えながら、管理組合が抱える疑問を整理する手助けになります。
相談すること自体に抵抗を感じる理事会もあるかもしれませんが、大規模修繕は多くの管理組合にとって数十年に一度あるかないかの大きな意思決定であり、外部の相談窓口を利用することは特別なことではありません。むしろ、判断に迷う点を早い段階で相談しておくことで、後になって「あのとき確認しておけばよかった」と感じる事態を避けやすくなります。
複数の見積もりを比較する際の視点
発注方式や選定プロセスをどれだけ公正に整えても、最終的には各施工会社から提示される見積金額を比較し、判断する場面が出てきます。見積書に記載された工事項目や単価が、一般的な範囲に収まっているかどうかを、工事を受注しない第三者の立場から確認したいという場合には、あんしん修繕研究所の「見積あんしん報告書」もご検討いただけます。
見積金額を見る前に工事項目ごとの適正な価格レンジを算出し、そのうえで実際の見積金額と比較するという二段階の分析を行う診断サービスで、1社見積もりから3社見積もりまでのプランをご用意しています(料金は税込・物件規模にかかわらず定額制です)。複数の施工会社から見積もりを取得して比較検討する際に、こうした客観的な視点を一つの参考情報として取り入れることも選択肢の一つです。3社見積もりのプランでは、各社の見積もりをそれぞれ分析するため、同じ工事項目について複数の施工会社の単価がどの程度違うのかを、客観的な基準と合わせて見比べることができます。
施工会社の選定は、大規模修繕の成否を左右する重要な工程です。発注方式の特徴を理解し、公正な手続きを意識しながら、納得感のある選定を進めていきましょう。設計監理方式か責任施工方式か、どちらを選ぶ場合であっても、理事会が「自分たちで選定の経緯を説明できる状態」をつくっておくことが、後々のトラブルを防ぐうえでの共通したポイントになります。
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